よくあるご質問

よく患者様からいただく疑問にお答えします。
随時更新予定です。

Q. 治療期間はどれくらいかかるの?

治療内容や個人差によってまったく違って来ますので、診察時にお尋ねください。
それぞれの患者様の状態に応じて、大体の治療期間の目安をお伝えすることができると思います。
神経までいっていない虫歯は比較的短期間で治療が終わりますが、
神経まで行っている虫歯や歯周病の治療は、数ヶ月など治療期間が長くなる傾向があります。

Q. 治療費用はどれくらいかかるの?

治療内容によって異なりますので、歯科医師までご質問ください。
ご希望があれば、次回の金額の目安等もお伝えすることができます。
なお、初診の際は一般的な検査・レントゲン撮影・応急処置を行って、保険診療で約3500円ほどを目安にお持ちください。

Q. 痛みがなかった虫歯を治療したら、しみるようになったのはなぜ?

痛みがないまま進行してしまった虫歯を治療すると、治療の刺激で痛みが生じてしまうことがあります。
ただ、痛みはなかったとしても虫歯は進行しており、治療しないとある時突然激痛が生じていた可能性は高いです。
虫歯を取りきっても、これまで虫歯に刺激されて弱っていた神経が回復するのには時間がかかることが多い
ため、一時的に知覚過敏の状態になってしまうことがあります。まずはしみ止めのお薬などで様子を見て、
どうしても痛みが落ち着かない場合は神経を取る治療が必要になる場合もあります。

Q. 痛くないまま進行した虫歯ほど治りが悪いのは何故?

一般的に考えると矛盾しているように思われるかもしれませんが、C2以上で神経を取る必要が出て来た歯の治療に際して、
痛みがないまま治療を始めた歯は、痛くなって治療を開始した歯に比べて、治りが悪い傾向があります。
なかなか症状が取れなかったり、再発を繰り返したり、などなど…

はじめに歯は臓器の一部だと言いましたが、歯の中の神経(歯髄)は生きているため、急激に進んだ虫歯に対しては抵抗できず、すぐに感染して痛みが生じてしまいます。ですが、緩やかに少しずつ、長い時間をかけて進行して来る虫歯に対しては、歯髄が自分を守ろうと、じわじわと虫歯が近付いて来る方向に向かって第二象牙質という固い組織を作り、虫歯から神経が逃げて行く状態になります。なので、神経は段々細くなり、時には糸も通らないぐらいの細さにまでなってしまうこともあります。また、それと同時に、細くなって行くと同時に段々弱っていき、時には中で勝手に死んでしまい、痛みも無いまま腐って膿みを溜めてしまうこともあります。そうなると、根の治療が難しいばかりか、細くなりすぎた根っこのために、治療器具が感染した全ての部分にまで到達できないことも多々あり、治りが悪くなったり、再発を繰り返したりする原因になります。

歯の生命力、抵抗力には個人差があるため、一度無症状で虫歯が進行して治療が大変だった方ほど、次に虫歯になっても同様に痛みが無いままどんどんと進行してしまうことが多く、「痛みもなかったのに、治療を始めると痛くなったり、期間がものすごく長くかかる。何故?!」という、一番嫌な状況に陥りやすいのです。ですので、痛くない方ほど、こまめな定期検診と早い段階での虫歯の処置が必要になってきます。

Q. 治療したはずの歯なのにまた痛くなったのは何故?

一度つめたり銀歯を被せたりした歯は、C2以上の状態から治療した歯であることがほとんどです。銀歯やつめものは虫歯にはならないため、ここから虫歯になるとすると、詰め物と歯の境目から侵入した細菌に感染して進んで行ってしまいます。ですので、スタートはエナメル質からではなく、既に露出した柔らかい象牙質からの虫歯のスタートになります。ということは、一度削った歯ほど神経にまで達する距離は短いことになりますし、エナメル質の保護がないため、進行もそれだけ早く進んでしまいます。さらに悪いことに、上からつめたり被せたりしている歯の中で虫歯が進行してしまうと、外から見ても穴が空いたりはしないためなかなか発見できず、レントゲンを取ってはじめて分かったり、詰め物が取れて痛みが出てやっと虫歯があるということに気付いたりすることが多くあります。さらに一度神経を取った歯は、虫歯が進行しても痛みを感じないため、酷い時には抜歯が必要な状態になるまで気付かないことも時々あります。ですので、一度治療した歯ほど悪くなりやすいし、進行も早いということを念頭に置いた上で、定期的なレントゲン撮影などのチェックと早めの受診が必要になるわけです。

「歯コラム」に記載した虫歯の成り立ちと、治療方法でお分かりいただけるかと思いますが、歯の治療は、痛みが出てからだと、神経を取ったり抜歯をしたりする必要が出て来る確率はかなり跳ね上がって来ます。また、定期検診は個人差はありますが、通常2ヶ月~6ヶ月間隔が適切です。しかし、急激に進む虫歯は、それこそ1週間2週間で一気に進んでしまうこともあるので、「なんかしみるな…」とか「違和感があるな…」など、いつもと違う症状を感じたら、早めの受診をお勧めします。一番大切なのは、痛みが出てから受診するのではなく、(1)定期検診でできるだけ早期に異常を発見し、早めの治療を心がけること、(2)何か気になる症状があったら、直ぐに受診すること、この2点が早期発見、早期治療の一番の早道だと思われます。

第1回:歯周病の治療について

 

「歯」に関するいろいろな情報を皆様にお届けするコラムのページです。
第一回目は「歯周病の治療について」です。
<歯周病とは?>
現代では、成人の約8割の人が歯周病にかかっているといわれています。そんなにたくさんの人がかかっているかもしれない歯周病とは一体どんな病気なのでしょうか?
歯周病とはその名の通り、歯ぐき(歯肉)とその他の歯を支える骨などの組織(歯周組織)に起こる炎症をいいます。
つまり歯を支える土台に起こる炎症のこと。
歯科医院でどんなにきれいな被せ物を入れても、歯を支える元、つまり歯周組織が駄目になってしまえば、全く意味がありません。
例えば、荒れ果てた砂地にどんなに立派な家を建てても、雨風ですぐに駄目になってしまうのと同じです。
ではなぜ人は、歯周病にかかってしまうのでしょうか?
そして、それを防ぐ方法はあるのでしょうか?
ここでは、簡単な歯周病の起こり方と、その治療法について説明させていただきます。
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<歯周病の起こり方>
みなさん、バイオフィルムという言葉をご存知でしょうか?
バイオフィルムとは歯を磨かないままで放っておくと、歯の表面に貼り付いて来る、白いねばねばのことです。
これは食べかすではなく、食べかすに群がっている細菌の塊なのです。
このプラークには耳かきひとすくい分に約2億匹もの細菌がうようよしているといわれています。
実はこのバイオフィルム、お口の中だけに存在するものではなく、身近な場所にも存在します。
それは排水溝のぬめりです。
そのぬめりと同じものがお口の中に存在すると考えただけでも、ぞっとしますよね。
その何億、何兆匹もの細菌が、あなたの磨き残しを狙って歯の表面をびっしりと被っているわけです。
そして更に悪い事に、その細菌は、歯肉を腫れさせたり、歯を支えている骨を溶かしたりと、
気付かない内に口の中でどんどんと悪さを働きます。

歯周病の初期段階は、ほとんど痛みはありません。
最近少し歯ぐきが腫れてきたなぁ、歯磨きすると出血するなぁ程度で、あまり大きな変化は見られません。

ですが、それがこの歯周病という病気の一番怖いところ。
あなたの歯周組織は着実に細菌に壊されているのです。
だんだんと骨が無くなって来ると、歯肉は腫れて膿が出はじめます。
大きく腫れたり、ずきずきした痛みが起きたり、歯がぐらつき始めることも稀ではありません。
この頃に、初めて口の中の異常に気が付いて来院される方がほとんどです。
気付いた頃にはすでに歯を抜かないといけない状態で、手遅れになってしまっていることも少なくはないのです。

では、どうすれば歯周病は治療する事ができるのでしょうか?

実は、一度溶けてしまった骨が完全に元通りに戻るということは、ありません。
なので、できるだけ早く歯周病を発見し、その進行を止める事が治療の目的になります。
そうすると、歯がぐらぐらしはじめてからよりは、痛みも何もない状態で治療を始めた方が、ずっと歯が長持ちするということです。

 

プラークが溜まってくると、まず細菌の出す毒素で歯肉が腫れてきます。
プラークは歯磨き(ブラッシング)で落とす事ができますが、歯磨きが充分にできずに磨き残しが溜まってくると、
段々石の様に固くなって来ます。これが歯石です。こうなるともうブラッシングでは落とす事ができません。
歯科医院での歯石除去(スケーリング)が必要になってきます。
【歯肉炎・軽度歯周炎】

さらに細菌の出す毒素で歯肉が腫れ上がり、歯を支える骨が溶かされていきます。
それでもまだ放置しておくと、歯石は骨を求めて
どんどんと歯肉の中へと潜って行きます。
そうすると、支えを失った歯は少しずつぐらぐらしはじめてきます。
歯肉の中にまで潜ってしまった歯石は、必要があれば歯肉に麻酔をして、1回に数本ずつ、
長い治療期間(数週間から数ヶ月)をかけて取っていかなくてはいけません。
【中等度歯周炎】

そうして、歯を支える骨がほとんど溶けてしまうと、
もう咬めないほどにぐらぐらしてきたり、勝手に歯が抜けてしまったりと、手の施しようがない状態にまで歯周病は進行して行きます。

こうなると、ほとんどの場合で抜歯が必要になってきます。
【重度歯周炎】

以上の様に、歯周病は完治する事がない、とてもやっかいな病気です。
いつまでも歯を失わず、何歳になっても自分の歯で食事が美味しくできるようにするのに一番大事なことは、早期発見早期治療。
進行すればするだけ歯の寿命も短くなり、また治療期間も長引きます。
痛くない内に歯科医院で適切な治療を受け、毎日のブラッシングをしっかり行うことこそが、
いつまでも健康な歯でいられる秘訣なのです。

第2回:歯科技工士について

「歯」に関するいろいろな情報を皆様にお届けするコラムのページです。
第二回目は「歯科技工士について」です。

皆さん、歯科技工士(Dental Technician)という職種をご存知でしょうか?

歯科技工士とは、歯科医師、歯科衛生士と同様に国家資格を持った職種です。
歯科技工士になるためには歯科技工士専門学校や短大を卒業し、
国家試験を受験して合格しなければなりません。

では、歯科技工士がどのような仕事をするかというと、歯科医師の指示に基づいて
銀歯や金歯等の詰め物や被せ物、また入れ歯等の技工物を作る仕事をしています。

<歯科技工士の仕事について>

では、実際にどのような仕事なのか紹介していきましょう。

金属の詰め物や被せ物の場合、まず歯科医院で虫歯を削り、上下の歯の型をとります。
型をとったら、通常歯科医院で、石こうを使って、模型を作ります。
これで、患者様のお口の中の状態を、そのまま口の外で模型として再現ができたことになります。

模型が出来たら上下の模型を咬合器という噛みあわせを再現する機器に取り付けます。
咬合器に取り付けたら、歯を削った部分にWAX(ロウ)で詰め物・被せ物の形を作ります。
形作ったWAXを鋳型に埋め、それを焼却炉に入れWAXを溶かしまします。
WAXが溶けたら石こうにWAXの空洞が出来ますので、そこに溶かした金属を流し込みます。
金属が流し込まれたら、それを鋳型からとり、それを磨いて金属の詰め物・被せ物が出来上がります。

そうして出来上がった金属が歯科医院に届けられ、患者様のお口の中で調整して、セメントで接着して完成になります。
歯科技工士の仕事について
以上のように、型をとってから完成まで様々な行程を経るため
約1週間という長い時間がかかるのです。
エンゲージリングなどを作るのに、注文してから
とても長い期間がかかるのと同じような工程です。

お口の中は、ほんの0.1mmの厚みの違いでも、
ものすごい違和感として感じるほどに繊細です。

そのため時間をかけてじっくりと、できるだけ適合性の良いものを作る必要があります。
そんな繊細な作業だからこそ、歯科医師としても、信頼の出来る歯科技工士さんにお願いしたいと思うのです。

<当院のお願いしている技工士さんの紹介>

滝山デンタルクリニックでは、この技工物を作る技工士さんは
安城市で開業されているAQUAデンタルスタジオ石本 忍 氏にお任せしております。
石本氏は、とても勉強熱心な方で、我々歯科医師としてもとても学ぶ事の多い歯科技工士さんです。

虫歯や歯槽膿漏で咬めなくなった歯 を、再び咬める事ができるようにして、
更にできるだけ長く患者さんのお口の中で機能させる事が出来るようにすること。
簡単にやっているように思われるかもしれませんが、
その裏には、技工士さんの行うこれだけ長い過程があってのことなのです。

歯科医師と歯科技工士の二人三脚で、今後も頑張って行きたいと思っています。

第3回:虫歯について

「歯」に関するいろいろな情報を皆様にお届けするコラムのページです。
第三回目は「虫歯について」です。

<虫歯について>

歯の構造と虫歯について
今回は、皆さんが一番悩まされる歯の痛み、虫歯とその治療方法についてご紹介します。
一概に虫歯といってもその進行具合によっていろいろな症状、治療法があり、
すべて同じ方法で治せるとは限りません。
1度で治療が終わってしまう場合から、
数ヶ月単位で治療期間を要する場合まで様々です。

<歯の構造と虫歯について>
虫歯のことについてお話しするのには、まずは歯の構造から少しお話しする必要があると思います。

C0→C1

皆さんは、歯はおもちゃのように単一の材料のみで
出来ていると思われているかもしれませんが、歯は骨や皮膚などと同じように、
れっきとした臓器の一部。絵のように複雑な構造をしています。
まず一番外側の白い部分は、エナメル質。
人体で一番固い部分で、ほぼ水晶と同じ固さです。
皆さんが通常外から見て歯の色だ、歯だ、と思うのはこの部分だと思います。
この厚みが2.0mm~2.5mm。
その固さのおかげで、歯を刺激から守ってくれたり、虫歯になるのを防御してくれています。
この部分が虫歯になってきても、ほぼ症状はなく、
ほんの少し色が変わって来たかなあと思う程度で、
なかなかこの段階で、ご自身で気が付く方はあまりいらっしゃいません。

C2

そのすぐ下には、象牙質という層があり、エナメル室より柔らかいため、
一旦虫歯がエナメル質を通って象牙質に達してしまうと、
一気に中で大きく進んでしまいます。
皆さんが、「あれ、歯がなんだかしみるなあ…」とか、
「甘いもので歯がしみるなあ…」と感じ始めるのは、
大体この部分まで虫歯が達した頃になります。
ただ、症状や人によっては、ほとんど痛みや違和感を感じないこともあり、
気が付くと一気に痛みも無く虫歯が進行していることもある時期です。

C3

象牙質の下には、歯髄があり、一般に歯の神経と呼ばれるものの層があります。
この中には、神経だけでなく、血管やリンパ管なども通っています。
ここまで虫歯が達してしまうと、根の先まである神経がすべて感染してしまい、
何もしなくてもズキズキした痛みが生じることが多くなります。
ただ、運がいいのか悪いのか、
まれに無症状のままここまで進行してしまう方も中にはいらっしゃいます。

C4

そのまま痛みを放置しておくと、いずれ中の神経は死んで腐って来て、
いずれ痛みは軽くなって来ます。
そうなるともう段々と歯ぐきの上に見えている歯の組織は形を失って行き、
残るのは歯ぐきに埋まった歯根と呼ばれる根っこのみになって来ます。
神経は歯の中だけでなく、根っこを通じて骨に繋がっているため、
細菌が骨の方にまで感染し、歯を支えていた骨の中にまで膿みを溜め始めて行きます。
そうして、それが進行すると次第に、再びズキズキした痛みが生じ、
歯ぐきの酷い腫れに悩まされることが出て来ます。
「痛くなくなったから放っておいたら、何ヶ月かしてまた急に痛くなって来た」、
「冷たいものや熱いものはしみないけど、何もしなくても痛い」といった症状のある方は、
既にこの状態になっていることがほとんどです。

<虫歯の治療法について>

1. C0→C1

症状やその深さによって変わりますが、一般的にC0(初期虫歯)やC1と呼ばれるものは主に、
(1)フッ素塗布やブラッシングによる経過観察
(2)少し削ってプラスチックの材料(CR)で詰める
という2種類の治療方法を取ることが多いです。痛みも少なく、ほぼ1回の治療で終わることがほとんどです。
また、治療に際して麻酔が必要ないこともあります。

2. C2

エナメル質を貫通して柔らかい象牙質に達した虫歯は、途端に一気に広がります。入り口は小さい穴、もしくは穴もあいていない様な状態でも、中ではごっそり空洞になっていることも多いです。また、何か食べていた拍子に、かろうじて残っていた固いエナメル質がかけてしまい、急にズドンと大きな穴が空いたように感じるのもこの頃の虫歯の特徴です。こうなってくると、神経に感染していることも多いため、治療方法は削って詰めたり埋めたりできるときと、神経を取らないといけなくなるときと、歯は運命の分かれ道に立っている状態です。

神経を取らなくてもいい場合は、虫歯の大きさや場所によって変わりますが、
(1)麻酔をして削ってプラスチックの材料でつめたり、型を取って小さい銀歯にしたりします。
基本的に、歯と歯の間の所を含むC2以上の虫歯は、保険治療だと銀歯になることが多いです。また、虫歯が全部取れて一旦つめたとしても、中の神経が既に少しでも感染してしまっていたり、これまで常に受けていた虫歯の細菌の刺激から回復できないと、治療が終わったのにしみるのがいつまでも続く、とか、治療後に痛みが生じておさまらない、といった症状を引き起こすこととなり、その場合は、
(2)神経を取って根の治療をすることも必要になってきます。この場合は、神経を取ると歯が弱くなってしまうため、部位によって変わりますが、基本的には被せものをする必要が出て来ます。

銀歯をかぶせることになると、最低でも2~3回の処置が必要になってきますし、神経を取ることになれば、最終的なものが入るまでには1ヶ月~数ヶ月単位の時間がかかることになってきます。

※3-Mix MP法について

他に、特別な治療方法として、最近よくテレビでよく耳にすることもあるかもしれませんが、3-Mix MP法という治療法があります。これは、歯髄ぎりぎりにまで虫歯が進んでいるC2の歯に対して、「虫歯はまだ少し残っているけど、大体柔らかい部分は取りきれた。これ以上削ると神経を取らざるを得ないし…」というような状況の時に、神経に近い部分に少し虫歯を残した状態で、患部に3-Mixという抗生剤の混ざったお薬を付け、上からセメントで蓋をして、お薬に虫歯を殺菌してもらおうという方法です。

ただこの場合、治療の正否は、(1)中の神経の生命力や細菌と戦う抵抗力と、(2)細菌とお薬との戦い、にかかっています。ですので、成功する場合もあれば、痛みが出て結局最後には神経を取らないといけなくなる場合と、両極端の可能性のある治療だと言えます。(1)の抵抗力の面から考えても、やはり再生能力の高い若年者やお子さんの生えたばかりの永久歯に対し、比較的効果が高い治療方法です。

神経を取ってしまうと、歯は経年的に弱って来て、神経が生きている歯に比べると予後も悪く、歯の寿命も短くなってしまいますから、チャレンジの意味としてこの治療方法を行う患者様も中にはいらっしゃいます。

テレビなどの放送をみて、どんな虫歯にも応用できると誤解されている患者様も多くいらっしゃいますが、この方法を適応するのは基本的に、大体C2→C3への移行期にある方で、(1)神経ぎりぎりの虫歯で、できるだけ神経を取りたくない方。(2)病気や妊娠などの理由で麻酔をした治療ができず、暫間的な治療が必要になる方、など、ある一定の条件でのみ行う治療だということをご理解下さい。また、必ずしも100%成功する可能性の保証された処置ではなく、痛みが今後出る可能性があることは、充分ご理解頂いた上で処置を行う必要があると思います。

実際の症例

3. C3

虫歯が神経にまで達してしまうと、一気に根の中にまで繋がっている神経全てに感染してしまうことが多いため、基本的にはほぼ麻酔をして神経を取り、最終的には被せものにする必要が出て来ます。奥歯に関しては、保険だと銀歯を被せる必要が出て来ます。治療には、その症状によりますが、最低でも1ヶ月~数ヶ月がかかります。また、痛みが無いまま無症状で神経にまで達した歯ほど、治療に際しての予後は悪く、なかなか症状が取れなかったり、治療期間が長期にわたってしまうことが多い傾向があります。

4. C4

神経を通り越し、さらに骨の中にまで細菌が侵入し、膿みを溜めてしまった状態になるので、治療に際しては、歯の状態や感染の状態にもよりますが、基本的には、(1)根の治療をして被せものにする、(2)抜歯をして、ブリッジまたは入れ歯にする、の2種類になります。顎の骨は柔らかく、細菌が侵入したらとても広がりやすいため、深部にまで感染を起こし、神経の治療期間はさらに長く、数ヶ月単位でかかる傾向があります。また、基本的に、歯ぐきの中にまで虫歯が及んでいる場合は、ほぼ抜歯になる可能性が高いです。

第4回:妊娠中の歯科治療について

「歯」に関するいろいろな情報を皆様にお届けするコラムのページです。
第四回目は「妊娠中の歯科治療」です。

<妊娠中の歯科治療について>

今回は、よくご質問のある、妊娠中の歯科治療についてご紹介します。
女性の一生の中でも妊娠期は女性ホルモンの影響により、
特に虫歯や歯周病などの口腔内トラブルに見舞われやすい時期だと言われています。
ご自身のお口の中の環境悪化に加え、歯周病菌による炎症物質は、
早産や低体重児出産の危険リスクとなることも報告されています。
将来的に妊娠をお考えの患者様は、
できるだけ早くお口の中の環境をまず整えておくことをお勧めします。
妊娠するとどんな症状が起こるの?
まず、つわりが人それぞれ違うように、妊娠しても必ずしも全ての妊婦さんが、
虫歯や歯周病に罹るというわけではありません。
ただ、相対的にはやはり口腔内トラブルを起こしやすい状況になりがちなのは、確かな事実です。

1. 虫歯

ホルモンの影響で、唾液の質が変わったり、お口の中の虫歯と戦う力が低下してしまったり、つわりによってしっかりと歯が磨けなくなったり、一度に食べられる量が減ることによって間食の頻度が増えてしまったり、などなど。さまざまな原因で、虫歯ができやすい環境、また元々あった虫歯が進行しやすい環境になってしまいます。

2. 妊娠性歯肉炎、智歯周囲炎

ホルモンの影響により、歯肉炎や歯周炎が進行しやすい環境になり、また先述のつわりによってブラッシングがなかなか細部まで行えないことにより、さらに炎症を起こしやすい状況になってしまいます。特に奥歯や、親知らず付近に炎症が強く起こってしまう患者様が多く見られます。

<妊娠中にできる治療、できない治療>

1. 飲み薬、麻酔薬について

基本的には、歯科で使用されるお薬や治療の材料に関しては、その量も少なく、そこまで深刻な胎児への影響は少ないとは言われています。
ただ、やはりほんの少量でも、抗生物質や鎮痛剤などお薬の成分が帯(へその緒)を通って、お腹の赤ちゃんに悪い影響を及ぼす可能性が全くのゼロだとは言い切れません。
投薬が必要となる場合は、担当の産婦人科の先生とも連携を取りながら、治療を進めていきます。

2. レントゲン撮影について

レントゲン写真撮影による被曝量も、歯科の撮影は子宮からかなり距離が離れていることや、その線量の少なさから、基本的にはほぼ影響がないのではないかと言われています。日本に住んでいて、宇宙や大地、食物摂取などから受ける自然放射線量は、おおよそ年間1.0~2.0ミリシーベルト程度だと言われています。2010年の愛知県の平均値だと、1.09ミリシーベルトだそうです。当院でも使用しているデジタルレントゲンですと、小さい写真(デンタル写真)で、約0.006ミリシーベルト程度になります。胎児に影響を及ぼすと言われている放射線量は約100ミリシーベルトなので、その線量の少なさはお分かり頂けるかと思います。但し、やはりゼロではないのも確か。やはり受けなくて済むに越したことはないですし、出来る限りは胎児へのリスクを軽減したいので、やはり気持ち的にも避けたいですよね。妊娠がまだ分からない、受精や着床時期に知らず知らず受けてしまった歯科のレントゲン撮影は、上記の理由からさほど心配はないと考えますが、やはり妊娠の可能性がご自身でわかっている場合や、妊娠が発覚してからのレントゲン撮影は、最低限に控えた方が安心だと思います。

3. 治療について

通常の歯科処置(歯石除去、虫歯の治療など簡単なもの)は、妊娠中でも行うことは可能です。ただし、妊娠初期の不安定な時期は、精神的な不安や痛みなどが原因の過度なストレスが流産を引き起こしてしまう可能性も完全に否定はしきれませんし、つわり中は色々な薬品の臭いで気分が悪くなってしまったり、長時間口を開けての治療が辛かったりと、あまり治療に向いている時期ではありません。基本的にはこの時期は、出来る限り麻酔などを使わない応急的な処置に留めておき、産後もしくは5ヶ月~7ヶ月の安定期に入った時点で、体調と相談しながら処置を行うことが一般的です。この時期になると、麻酔薬の胎児への奇形などの影響もあまり心配しなくてすむことになるので、麻酔を使って虫歯の治療をすることも可能になります。但し、8ヶ月を過ぎてしまうと、今度は大きくなった子宮に圧迫され、長時間仰向きの姿勢で治療することが不可能になってきますし、また疲労やストレスによって早産などのトラブルに発展することも少なくはないため、基本的には応急処置を行った上で、産後にしっかりした治療を行うようになります。

ただし、上記はあくまでも理想的なスケジュール。痛みなどの症状によっては、痛みを放置するリスクと、赤ちゃんに対する治療の影響を考慮して、担当の産婦人科の先生と連携を取りながら、一般的には治療には不適だと言われている時期でも治療を進めて行く必要が出て来ることもあります。また、状態によっては一般歯科では対処不能なこともあり、専門の病院への受診が必要になる場合もあります。自己判断はせず、かならず症状があったら、妊娠時期に関わらず、歯科を受診することをお勧めします。

<産後の治療について>

さて、妊娠期間中に何とか痛み無く経過したからと言って、
産後すぐに治療を再開できるわけではありません。
産後はお母さん自身の身体を回復させるのにも時間がかかりますし、
赤ちゃんのお世話に追われてなかなか受診ができないのも事実。
また、レントゲン写真の撮影や麻酔薬を使用した治療は問題ありませんが、
根の治療をしたり抜歯をしたりと、
術後抗生物質などの飲み薬が必要となる処置については、
やはり授乳中はあまり望ましくはありません。
できればミルクに切り替えていただくか、
ミルクが無理な場合は、産婦人科の先生と相談の上、
比較的授乳中でも問題ないお薬を使用した治療を行って行く必要が出て来ます。
神経の治療になったり、虫歯の本数が多かったりだと、
治療回数もどうしても多くなってしまい、
治療がお母さんや赤ちゃんの負担になってしまうことも考えられます。

じゃあ、一番いいことは?

一番いいのは、これからの妊娠を考えた時点でまずは歯科を受診し、
妊娠前に全ての歯の治療を終わらせておくこと。
また、妊娠前、妊娠中を通じて定期的な健康診断を受け、
不安要素を少しでも少なくしておくことが大事だと思われます。
いくら全ての治療が妊娠前に終わっていたからといって、
妊娠中に絶対に虫歯にならないという保証はありませんが、
そのリスクを下げ、治療期間を短くすることはできます。
また、治療が長期に及びそうな場合、優先順位を付け、
妊娠前に絶対行っておかなくてはいけない治療、
妊娠中や産後でも可能な治療をご相談しながら振り分けて、
治療計画を立てて行くこともできます。
もしこれから妊娠を考えていらっしゃるようでしたら、早めの受診と治療をお勧めします。
また、治療に際して、「もしかしたら…」と妊娠の可能性がある方や、
「○月頃妊娠を希望している」というような方は治療方針の立て方に影響して来ますので、その時点で必ず主治医までお伝えくださいね。